村上 孝一/アナリストの目

NY金、上昇トレンドを継続へ:2017/09/01 17:20:47

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、8月25日の米ジャクソンホール会合でのイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長とドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁の講演を受けて、ドルが対主要通貨で下落したため、ドル建てで取引される金などの商品に割安感が生じたことから買われた。また、北朝鮮が8月29日に弾道ミサイルを発射したことで地政学的リスクが高まったことも買い材料となり、中心限月期近12月限は29日に一時、1331.90ドルと、昨年11月9日(1338.30ドル)以来、約9カ月半ぶりの高値を付けた。

 北朝鮮は8月29日に日本上空を通過する中距離弾道ミサイル「火星12」を発射。金正恩朝鮮労働党委員長は、爆撃機の基地がある米領グアムをけん制するための「前奏曲」と位置付け、「今後、太平洋を目標にして弾道ミサイル発射訓練を多く行う」と表明。一方、トランプ米大統領は30日、北朝鮮への対応について「対話は答えではない」とツイッターに投稿。北朝鮮が弾道ミサイル発射による挑発を再開したことに、強い不満を表明したものとみられる。
 また、米軍が31日、B1戦略爆撃機2機などを派遣し、日韓と共同訓練を実施したことで、北朝鮮が猛反発するのは必至。韓国軍高官は31日の国会国防委員会で、今後の北朝鮮の出方として、「米国の圧力への非難や威嚇を続け、弾道ミサイル発射や6回目の核実験などを行う可能性がある」と述べた。米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院の米韓研究所は30日、人工衛星画像に基づき、決定が下されればいつでも実験可能な「高度な待機状態」は維持されているという。
 米韓合同軍事演習は8月31日で終了したが、北朝鮮では9月9日に建国記念日を迎える。これまで記念日などの節目に合わせて軍事的挑発に出ており、昨年の建国記念日には核実験を実施していることから、来週も北朝鮮をめぐる地政学的リスクは、金相場を支える材料として継続するだろう。

 ムニューシン米財務長官は8月31日、米CNBCテレビに出演し、連邦債務の上限引き上げ期限が9月29日との認識を示し、議会に引き上げの早期承認を求めた。南部テキサス州が見舞われた水害復興に絡む財政支援により、数日間前倒しされる影響があると語った。米議会はレーバー・デー明けの9月5日から再開され、2018会計年度(17年10月−18年9月)予算と債務上限引き上げの重要法案が審議されるが、難航することが予想される。
 トランプ米大統領は8月22日の政治集会で「政府閉鎖を余儀なくされても、メキシコとの国境の壁を建設する」と述べた。ただ、この発言に対し共和党内から批判が相次いだうえ、野党民主党執行部は壁の建設に強固に反対しているため、議会が壁建設予算でまとまる可能性は低い。また、共和党執行部は債務上限引き上げ実現に自信を持っているが、政権が最重要政策として掲げていた医療保険制度改革(オバマケア)見直し法案が頓挫したことで、市場では執行部が共和党を結束させることができるのか不安視している。

 また、目先の注目材料は日本時間9月1日午後9時30分に発表される8月の米雇用統計。景気動向を反映する非農業部門就業者数は、2カ月連続で好調の目安とされる20万人増加を上回ったが、8月の市場予想は18万人増加と伸びが減速する見通し。物価動向の先行きを示す数値として注目されている平均時給の市場予想は前月比0.2%増と、前月の0.3%増を下回る見通し。8月31日発表された7月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.4%上昇と、米FRBが目標とする2%を依然下回っている。平均時給も市場予想通りとなり、伸び率の鈍化傾向が続くことになれば、米FRBが想定している「年内1回」の利上げに対する懐疑的な見方は継続するとみている。

 以上のことから、NY金は8月の米雇用統計が市場予想を大幅に上回ることがない限り、現在の上昇トレンドを継続し、北朝鮮や米政治情勢が投資家のリスク回避姿勢を強めることになれば、昨年11月9日の高値を突破するだろう。一方、9月1日は8月の米雇用統計と8月の米ISM製造業景況指数の発表も予定されており、これらの統計が市場予想を下回り、リスク回避の動きが強まれば、2016年9月以来となる1350ドルの節目を突破する可能性がある。

 (注)上記の展望は9月1日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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