村上 孝一/アナリストの目

NY金、上値を追う場面も:2017/09/08 16:56:47

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、北朝鮮をめぐる地政学的リスクや為替のドル安進行などで買われ上昇。中心限月の期近12月限は9月7日に一時、1355.50ドルと、2016年9月7日(1357.60ドル)以来、1年ぶりの高値を付けた。

 9月1日発表された8月の米雇用統計は、景気動向を反映する非農業部門就業者数と、物価上昇の先行きを示すとして注目されている平均時給が市場予想を下回った。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が9月5日の講演で「FRBのインフレ2%目標達成に自信が持てるまで、利上げは慎重であるべきだ」と明言し、早期の追加利上げに慎重な姿勢を示した。さらに、カシュカリ・米ミネアポリス連銀総裁も同日の講演で追加利上げに否定的な考えを示したことから、市場では年内の利上げが見送られるとの観測が広がった。一方、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は7日に開催された定例理事会後の会見で、年末までを区切りとする現在の量的緩和策の見直し議論に着手したと明らかにし、次回10月にも来年以降の方針を決定する考えを示した。
 これらの要因などにより、外国為替市場ではドルが対主要通貨で売られる展開となり、主要6通貨で構成されるドル指数は9月7日に一時、91.405と、2015年1月6日(91.117)以来、2年8カ月ぶりの安値を付けた。

 北朝鮮が9月3日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)用水爆の実験を強行したのを受け、米国は6日に新たな対北朝鮮制裁決議案を国連安全保障理事会の全15理事国に配布した。新たな制裁案は、北朝鮮への原油供給の全面禁止、外貨収入源の締め付け強化策として繊維製品の全面禁輸と北朝鮮の出稼ぎ労働者の受け入れ禁止、金正恩朝鮮労働党委員長の資産凍結と渡航禁止・・・など、米国が目指す「最強の制裁」を前面に打ち出した。北朝鮮を不安定化させる措置に反対してきた中国やロシアが制裁案をこのまま受け入れるかは微妙だが、米国は9月11日採決の方針を目指している。一方、北朝鮮は米国の制裁・圧力強化を非難、「米国が制裁や圧迫に執着するなら、到底耐えることのできない、類例ない断固たる対応に直面することになる」と警告しており、安保理で原案に近い制裁決議案で可決された場合、北朝鮮が新たな挑発行動に出る可能性が高まる。
 また、日米韓は、北朝鮮が建国記念日(9月9日)や朝鮮労働党創建記念日(10月10日)に合わせて新たな挑発行動を取る可能性があると警戒を強めている。韓国の国防省は、北朝鮮によるICBM再発射の可能性があるとの見方を示している。金正恩朝鮮労働党委員長は太平洋に向けた弾道ミサイル発射を続ける方針を示しており、次にICBMを発射した場合、再び日本越えとなる可能性がある。また、韓国の情報機関は核実験の準備が出来ているとの見方を示した。

 また、米労働省が9月7日に発表した週間新規失業保険申請件数が前週比6万2000件増加の29万8000件と2015年4月15日以来の高水準を記録。大型ハリケーン「ハービー」による経済への悪影響が実際に現れたことで、ドルと株式が売られた。さらに、米南部フロリダ州には大型ハリケーン「イルマ」が接近中で大規模災害への警戒感が広がっており、リスク回避による資金の逃避先として金が買われる材料となっている。

 NY金は前述の要因のほか、トランプ米大統領と議会執行部がデフォルト(債務不履行)と政府機関閉鎖の回避で合意したものの、財政危機を12月に先送りしたにすぎず、市場の不安感は払しょくされていないことも支援材料。
 NY金は来週も前述の要因が買い材料として継続すれば、上昇基調を継続することが予想される。1350ドルの節目を突破したことで、チャート上では2016年6月24日に英国の欧州連合(EU)離脱が決定した後の同年7月6日に付けた高値1377.50ドルが次の上値目標となり、北朝鮮が弾道ミサイル発射などの挑発行動に出れば、同上値を突破する可能性もある。

 (注)上記の展望は9月8日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介 第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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