村上 孝一/アナリストの目

NY金、投資家の不安心理が支えに
2018/02/09 16:59:49

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、主要中央銀行による金融引き締め観測や為替のドル高・ユーロ安が売り材料となり、中心限月の期近4月限は2月8日に一時、1309ドルと、1月25日に付けた約1年5カ月ぶりの高値1365.40ドルから、56.40ドル(4.13%)下落した。

 2月2日発表された1月の米雇用統計で、長く低迷が続いていた平均時給が前年同月比2.9%増と2009年6月以来の大きな伸びとなるなど、景気過熱リスクが台頭。過度のインフレを未然に防ぐため、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げペースを速めるとの観測が強まったのを受けて、外国為替市場でドルが対ユーロで上昇。また、英イングランド銀行(中央銀行)が8日発表した声明で、早期の追加利上げに動く可能性を示唆したことから、世界的に中央銀行が金融引き締めに向かうとの観測が浮上したことも売り材料となった。金利上昇は金利の付かない資産である金の投資妙味を減退させる。

 また、米長期金利の急伸を受けて、史上最高値を更新し続けていたニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均が急落。5日の終値は前日比1175ドル安と、1日の下げ幅としてはリーマン・ショックを受けて世界的に景気が悪化した2008年9月29日の777ドルを上回り、過去最大を記録。市場では「株式と金に投資していた投機筋が、株安による損失を補てんするため、金を売却」、「投資家は株を売るよりも追加証拠金を差し入れるために金を売った」との指摘が聞かれた。
 NYダウ平均は1日の値幅が1500ドルを超える5日をピークに乱高下を繰り返しており、8日の終値は1032ドル安と再び1000ドル超の下げ幅を記録。米株価の急落は今のところ、資金の逃避先として金が活発に買われる動きはみられない。前述の金利上昇のほか、「株価が急落したものの、米経済がなおも比較的強いとの信頼感が金への投資を遠ざけている」との指摘が聞かれる。
 ただ、米国発の世界的株安は投資家の不安心理を強めている。投資家の不安心理の指標となる米シカゴ・オプション取引所(CBOE)の恐怖指数(VIX)は終値の水準としては、中国経済減速への懸念から世界的株安を招いた2015年8月以来の高水準にあり、こうした投資家の不安心理は金相場の下支え要因となっている。

 NY金は米FRBの利上げペース加速見通しや為替のドル高に圧迫されている。しかし、前述のようにVIX指数が高水準にあり、米株式相場の先行きに不透明感が漂っている状況は、金相場を下支える材料になるとみている。さらに、投資家の不安心理が高まっている状況で株安の材料が出れば、投資家のリスクオフの動きが加速する状況が見込まれ、安全資産としての金需要拡大につながる可能性がある。
 その株安の材料としては米長期金利の上昇継続のほか、米連邦予算の議会審議が注目される。議会での予算審議が遅れているため、米連邦政府のつなぎ予算が日本時間9日午後2時に失効。予算失効は1月20日に続いてトランプ政権で2度目。議会は政府機関が業務を開始する9日朝までに予算を成立させたい考えだが、再び一部機関が閉鎖される恐れがある。1月の閉鎖は3日間で終わったうえ、NYダウ平均が史上最高値を更新し続けていたため、相場に与えた影響は限定的であった。ただ、今回は前述のように投資家心理が不安定な状況なだけに、政府機関の一部閉鎖が決定し再開の見込みが立たない事態となれば、リスクオフの動きが加速する状況が予想される。

 (注)上記の展望は2月9日夕方時点に作成されたものです。
●アナリスト紹介 第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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