村上 孝一/アナリストの目

ドル高が重しのNY金、リスク要因が支えに
2018/05/11 17:03:22

 トランプ米大統領は5月8日、2015年に欧米など主要6カ国とイランが結んだ核合意からの離脱と、対イラン制裁の再発動方針を表明。また、米財務省は10日、イラン精鋭部隊「革命防衛隊」による不正なドル資金調達に関与したとして、イランの6個人と3団体を制裁対象に指定すると発表するなど、トランプ米政権はイランの核開発阻止へ向け、追加制裁などを通じて圧力路線を徹底する方針を鮮明にした。
 一方、イランのロウハニ大統領は8日のテレビ演説で、「(米国を除く)英仏独ロ中の5カ国と協議して核合意の目的が達成されるなら、イランはとどまる」と表明。イラン政府高官は10日、イランと英仏独、欧州連合(EU)が核合意存続の危機を打開するため15日に外相会合を開くことが決定したと述べた。ただ、欧州はイランの弾道ミサイル開発やシリアのアサド政権支援に関して、トランプ大統領と同様に批判的で、協議の障害となる可能性があり、イランの最高指導者ハメネイ師は9日、「欧州3カ国の明確な保証を得られなければ、我々は核合意に残ることはできない」と警告している。ロウハニ大統領は、交渉が決裂すれば「工業用のウラン濃縮活動」を無制限で再開することもあり得ると警告し、核拡散防止条約(NPT)脱退も今後の選択肢に挙げている。さらに、米の同盟国のイスラエルやサウジアラビアを射程に収める弾道ミサイルの開発も急ぐとみられている。
 また、イスラエル軍は10日、シリアに展開するイランの精鋭部隊「革命防衛隊」によるロケット弾攻撃への報復として、シリアにある革命防衛隊の軍事拠点を空爆し、シリア側でアサド政権軍や「外国人の兵士」を含む23人が死亡した。イランがシリアからイスラエルの実効支配地域に攻撃を加えたのは初めてみられる一方、イスラエル軍の空爆は対イラン攻撃として近年で最大規模となった。互いを敵視するイスラエルとイランの衝突が激化し、報復の連鎖に陥る事態が懸念される。

 外国為替市場ではドルが米利上げ観測や米長期金利上昇などを背景に上昇している。
 市場では6月12〜13日開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げが実施されるとの見方が台頭。米連邦準備制度理事会(FRB)が開催した5月1〜2日のFOMC後の声明で、インフレ率が物価安定目標の「2%に近づいた」と判断を引き上げた。さらに、5月4日発表の4月の米雇用統計で、景気動向を反映する非農業部門就業者数の増加幅は市場予想を下回ったものの、前月からは伸びが加速したうえ、失業率が3.9%と2000年12月以来17年4カ月ぶりに4%の大台を下回り、堅調な景気拡大が改めて裏付けられたことで、市場では「6月会合での利上げを正当化する結果」と受け止められた。
 ただ、9日発表された4月の米卸売物価指数、10日発表された4月の米消費者物価指数が市場予想を下回る伸び率となったことから、「米利上げペースが加速」するとの観測は後退している。

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は為替のドル高が売り材料となったものの、中東情勢をめぐる地政学的リスクなどに支えられ、終値ではテクニカル上の長期的な強弱の節目となる200日移動平均線(5月10日現在:1306ドル付近)を維持している。目先の上値目標は100日移動平均線が通る1325ドル付近(同)とみているが、為替のドル高基調が引き続き、圧迫材料になることが予想される。ただ、前述の中東情勢をめぐる地政学的リスクのほか、来週には米中貿易協議がワシントンで開催される予定で、前週に続き協議が平行線に終わりリスクオフ要因として再び注目を集めるようだと、リスクオフによる資金の逃避先として安全資産とされる金が買われる可能性がある。
 以上のように、為替のドル高が圧迫材料となるものの、リスクオフによる買いにより、終値で100日移動平均線を突破すれば、1350ドルの節目が視野に入ってくるだろう。

 (注)上記の展望は5月11日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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