横谷 健司/アナリストの目

原油は40ドル割れを試す可能性も
2020/08/19 15:35:19

 米エネルギー情報局(EIA)と米石油協会(API)が12日午前にかけて発表した週間在庫統計で、米国内の原油在庫がそれぞれ市場予想を上回る減少幅となったうえ、ガソリンと留出油在庫もそろって減少となったことから、新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて落ち込んだ需要が持ち直しつつあるとの期待感が台頭し、12日に反発となったものの、トランプ米大統領が13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が国交正常化で合意したと発表したことを受け、中東地域の地政学的リスクが後退したとの見方が広がり、14日にかけて軟調となった。
 ただ、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟国の産油国で構成するOPECプラスの協調減産に関し、産油国の減産順守率が高い水準だったことに加え、中国政府系の石油会社が、8月から9月の間に米国産原油を輸入するためタンカーを仮予約したとの報道を背景に、週明けには再び5日の直近高値43.52ドルを試す展開となっている。

 国際エネルギー機関(IEA)は13日付の月報で、2020年の世界石油需要を前回の予想から日量14万バレル下方修正した。新型コロナの世界的流行で航空機による旅行が減少したことが主因だという。また、OPECも12日、20年と21年の世界石油需要予測をそれぞれ下方修正したと発表。世界エネルギー需要の先行きに対する警戒感が再燃している。
 トランプ米大統領は18日、米中貿易協議「第1段階合意」の履行状況を検証する閣僚級協議を自身が延期したと明らかにした上で、「中国とは今は話したくない」と語った。合意を破棄する可能性について「何が起こるか見てみよう」と含みを持たせた。  米中両国の対立が激化するようであれば、IEAやOPECが発表した月報とともに、世界的なエネルギー需要の減退観測が強まることになるため、原油相場は下値を試す展開が予想される。

 新型コロナへのワクチン開発の進展をにらみながら、経済活動の本格的な再開への期待感が株価を後押しし、米株価は再び上値を試す展開となっている。株価が今後も堅調推移を継続するようであれば、株価と並ぶリスク資産である原油も上値を試す可能性もありそうだ。
 ただ、世界的には新型コロナの新規感染者は急増しており、一部では再び経済活動を制限する動きが広がっている。景気が減速すれば、燃料などのエネルギー消費は伸び悩む可能性が強い。
 過熱気味の株式市場に対し、実体経済との乖離を警戒する声も出始めた。日本をはじめ、欧米先進国の2020年4〜6月期実質GDP(国内総生産)の落ち込み幅は、リーマン・ショック後を大きく上回った。株価が大幅な修正安局面となれば、原油は再び40ドルの節目を割り込むことになりそうだ。

 19日にOPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)が開催される。相場に影響を与えるような決定や勧告はないとされ、現状の日量770万バレルの減産の維持が確認される見通しだが、何も決定がなければ、産油国の減産幅再拡大への期待がはがれ落ち、発表後は下値を試す可能性もありそうだ。また、今後シェールオイルの増産が進めば産油国の結束が緩み、生産コストが安いロシアなどから減産幅を縮小する動きが出る可能性もあるという。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)フューチャーズ24、横谷 健司
 現在、フューチャーズ24にて、FAX・メール情報に掲載する市況作成等を担当。過去の価格変動や現在の世相を背景にした商品分析を得意とする。