横谷 健司/アナリストの目

原油は35ドル割れを試す可能性も
2020/09/10 13:35:31

 サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコは5日、10月の原油公式販売価格(OSP)を引き下げた。アジア向けのアラブライト原油のOSPをバレル当たり1.40ドル引き下げ、オマーン・ドバイ原油の平均価格を1バレル=0.50ドル下回る水準に設定したことを受け、この措置がアジア地域の燃料需要の鈍化を見込んだものと受け止められたことに加え、米国のドライブシーズンの終了と製油所の定期改修入り、米中対立の先鋭化や8日の米国株安といった複数の弱材料が重なったことなどを背景に、連休明け8日のNY原油は6月中旬以来約3カ月ぶりの安値を付けた。
 英製薬大手アストラゼネカは9日、英オックスフォード大と共同開発中の新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、臨床試験(治験)を一時中断したと発表。しかしその後は来週にも治験が再開される可能性があるとの英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)報道が伝わり、投資家のリスク回避姿勢が後退したことから、9日の欧米株価が反発し、株価と並ぶリスク資産である原油もやや値を戻す格好となっている。

 ただ、9日の清算値(終値)確定後に発表された米石油協会(API)の週間在庫統計で、4日時点の米国内の原油在庫は前週比300万バレル増の5億0410万バレルとなった。アナリストの事前予想では140万バレル減だっただけに、東京時間帯のNY原油の10日付け夜間取引は軟調に推移している。
 日本時間11日午前0時に発表される米エネルギー情報局(EIA)の週報でも、原油在庫が増加となれば、8日の直近安値36.13ドルを割り込み、6月15日以来となる35ドル割れを試す可能性もありそうだ。

 米国政府の追加措置は共和党と民主党の意見の相違から、すぐにはまとまりそうにないため、本格的な景気回復の歩調は今後も鈍いことが予想されるほか、新型コロナ感染者数はインド、英国、スペイン、米国の一部で増加を続けている。感染拡大は世界経済の回復を遅らせるため、航空機用燃料からディーゼルに至る燃料需要を減退させる可能性が高いことから、短期的な原油市場の需給要因は弱気であるとみられるため、NY原油は下値を試す展開が予想される。

 欧州中央銀行(ECB)の理事会が日本時間今夜開かれる。ECBの金融政策をめぐり、8月27日の米ワイオミング州ジャクソンホールの経済シンポジウムで、ECBのレーン専務理事がユーロ高をけん制し、インフレ目標達成について「これ以上の遅延は容認できない。必要に応じて全ての政策措置を調整する用意がある」と述べるなど、緩和的な姿勢を示した。
 理事会後にECBの金融緩和が長期化するとの観測が広がった場合、ユーロ安・ドル高に振れることが予想されるため、ドル建てで取引される原油の割高感が強まり、NY原油にとっては圧迫材料となることが予想される。ただ、ユーロ安・ドル高は円安に波及する可能性もあるため、東京商品取引所のドバイ原油はNY原油に比べると下げ渋る可能性もありそうだ。