横谷 健司/アナリストの目

原油は下値を試すか
2020/10/14 14:06:42

 NY原油は大型ハリケーン「デルタ」がメキシコ湾岸に接近し、石油精製施設から従業員が避難していることから、原油の供給懸念が広がり、8日に急反発となった後、9日に9月18日以来約3週間ぶりの高値を付けた。
 ただ、ノルウェー沖石油・ガス田でのストライキが9日に収拾したことに加え、ハリケーン「デルタ」がメキシコ湾岸を通過したことで、石油精製施設が生産を再開したことから供給懸念が後退し、12日に再び40ドルの節目を割り込んだが、13日の中国の貿易統計が良好な内容となったことを背景に、エネルギー需要の増加観測が広がり40ドルを回復するなど、引き続き40ドルを挟んだ値動きとなっている。

 石油輸出国機構(OPEC)は8日発表した2020年版世界石油見通しで、世界の石油需要が30年代後半に頭打ちになり、その後は減少し始める可能性があるとの見通しを示した。新型コロナウイルス危機による経済や消費動向への影響を反映した。
 アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は13日、OPECとロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」が計画通り来年1月から減産規模を現状の日量770万バレルから580万バレルに縮小するとの見通しを公表した。
 産油国の経済情勢は厳しく、減産を緩和したい国は多いとみられるが、リビアが生産を再開している状況で減産を緩和した場合、原油相場が一段安となる可能性があるため、産油国は減産の緩和になかなか踏み切れないとみられる。ただ、1月以降もOPECプラスによる減産の緩和が続くようであれば、下値を試す可能性が強まることになりそうだ。

 国際エネルギー機関(IEA)は13日に公表した年次の世界エネルギー見通しで、新型コロナ感染拡大の影響で世界経済の回復が遅れれば、世界のエネルギー需要も2025年まで完全な回復が見込めないとの見通しを示した。
 11月3日の米大統領選では、再生エネルギーの振興を掲げる民主党候補のバイデン前副大統領の優勢が伝えられている。バイデン氏のエネルギー政策では、トランプ政権で締め付けが強化されたイラン政策が緩和に向かうとの見方もあり、イラン産原油が国際市況に復帰した場合、需給が緩むことになり、原油相場は9月8日の安値36.13ドルを試す可能性が強まりそうだ。

 11日にハリケーン「デルタ」が通過したメキシコ湾岸で原油や天然ガスの生産が再開されたほか、リビアでは日量30万バレルの生産能力があるシャララ油田の生産再開が報じられるなど、先週までの供給懸念が後退しているほか、英国やスペイン、イタリア、チェコなどで、コロナ感染者数が増加する中、規制が強化され、フランスでも一部地域で封鎖措置が講じられる可能性が示唆されるなど、欧州諸国での感染拡大に歯止めが掛かっていないことを背景に、世界のエネルギー需要の減退観測が根強いため、目先は下値を試す展開が予想される。