盛川 貴洋/アナリストの目

金は米大統領選挙後を睨んだもち合いの動きに
2020/10/23 15:56:55

 今週の金標準は、11月3日の米大統領選を前に一部の投資家が利益確定の売りを出したことから軟化したが、100日移動平均(23日時点6394.26円)の水準を維持して週末の取引を終えた。目先、米大統領選挙を控えて様子見姿勢が強まると考えられるが、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領のどちらが当選しても波乱が見込まれるため市場の警戒感が強く、下落した場面では買い拾われる動きが見込まれる。

 米国の新型コロナウイルス感染症に対する追加経済対策の与野党の協議が、大統領選挙前に成立するか否かが目先の焦点となっている。協議が難航している追加経済対策をめぐり、野党民主党のペロシ下院議長は、協議の合意期限を20日に設定するとともに、11月3日の大統領選前の成立を「楽観している」と発言。協議が進展することへの期待から米株式市場は上伸。インフレヘッジとして金が買われる場面もあったが、しかし、その後ペロシ氏が政権との隔たりが依然大きいと述べたと伝わると、大統領選前の対策成立への期待が急速に後退し、金も下落した。

 ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)が現状の金融緩和策を2023年まで継続するとの見方が、金相場を下支えている。
 クラリダ米FRB副議長は19日、景気が新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受ける前の状態に戻るまで時間を要すると語った。回復を後押しするため「FRBはあらゆる手段を講じる」と強調する一方、政府と議会による追加財政支援が必要だと改めて訴えた。また、米アトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁は19日、「総じて現行の金融政策スタンスは心地が良い」と語った。サービス業など他の産業より雇用の回復が遅れている分野があることを踏まえ、FRBによるゼロ金利政策、量的金融緩和策が当面は妥当との認識を示し、米フィラデルフィア連邦準備銀行のハーカー総裁も米経済の回復は「極めて長い道のりになる」との見解を示している。

 共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の最後のテレビ討論会が22日(日本時間23日午前10時)に開催されたが、新型コロナウイルスへの対応や互いの疑惑についても非難し合ったが、決定的な内容とはならず、英BBCは今回の討論会の勝者は「ミュート(消音)ボタンだ」と締めくくった。
 米大統領選を巡っては、新型コロナウイルスの影響で大幅増加が予想される郵便投票に対し、トランプ米大統領は自身が敗れた場合は不正があったと見なし、法廷闘争に持ち込む構えを見せており、波乱が予想されている。そのため、来週は米大統領選挙を睨んだ調整主導の動きが見込まれ、市場の混乱を睨んで手元の現金を積み増す動きが強まるようだと、金相場は一時的に下落すると考えられる。ただ、バイデン氏が当選した場合は同氏の掲げる金融政策案が実施されることで財政支出が増加するとの見方から急反発する可能性があり、8月7日の史上最高値7032円を視野に入る。そのため、積極的な売りも控えられ、来週は現在の水準でのもち合いを継続すると予想される。