村上 孝一/アナリストの目

NY金、米雇用統計結果に注目
2018/03/09 17:20:20

 トランプ米大統領は3月8日、鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置の発動を命じる大統領告示に署名。輸入増加を安全保障上の脅威と認定し、15日後に鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を適用する。除外対象は当初、カナダ、メキシコの2カ国にとどめ、日本など他の同盟国については、安保・経済両面の協議次第で関税を解除する方針を示した。トランプ米大統領は当初、すべての国・地域が制限措置の対象になる方針を示していたが、適用除外が設けられたことで、8日のNY株式市場では「貿易戦争」への過度な警戒が和らぎ上昇、優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日比93.85ドル高で取引を終了した。
 トランプ米大統領が輸入制限の発動を決定したことに対し、中国商務省の王賀軍・貿易救済調査局長は9日に談話を発表、「力強い措置を講じる」と報復する構えを示した。これまでより強い姿勢で反発しており、米国からの輸入品に高率関税を課す可能性もある。また、欧州連合(EU)のマルムストローム欧州委員(通商担当)は8日、ツイッターで、「米国と同盟関係にあるEUは除外されるべきだ」と強調、その上で米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表と10日にブリュッセルでこの問題をめぐり会談することを明らかにした。米国は、適用除外を望む国には貿易不均衡の是正や安全保障面の貢献を迫る構えであり、今後の交渉次第では「貿易戦争」に発展する可能性がある。

 日本時間3月9日午後10時30分に2月の米雇用統計が発表される予定。景気動向を反映する非農業部門就業者数の市場予想は1月と同水準の前月比20万人増加と、2カ月連続で労働市場の好調さの目安とされる20万人台を確保する見通し。失業率の市場予想は4.0%と前月から0.1ポイント低下し、2000年12月(3.9%)以来の低水準になる見通し。ただ、市場では2月の米長期金利急伸と米株価急落の引き金となった平均時給へ注目が集まっている。2月2日に発表された1月の平均時給は前年同月比2.9%増と市場予想の2.6%増を上回り、2009年6月以来8年7カ月ぶりの大幅な伸び率を記録したのを受けて、「米連邦準備制度理事会(FRB)が今年3回を想定する利上げペースを加速する」との警戒感が強まった。
 2月の平均時給の市場予想は前年同月比で2.8%増と1月を下回る見通しだが、市場予想通りなら1月の大幅上昇は一時的なものではなく、持続的な動きを示していると受け止められる可能性がある。また、非農業部門就業者数と失業率も市場予想に近い水準となれば、米FRBが3月20〜21日開催する連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げと利上げペースが加速するとの観測が弱まることはないだろう。

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、2月の米雇用統計が市場予想通りか近い水準なら、売りが先行する可能性がある。ただ、前述の米輸入制限措置発動による「貿易戦争」への懸念が払しょくされていないことが下支え要因となり、1300ドルは維持するだろう。
 また、市場が注目している平均時給が1月に続き市場予想を上回る伸び率となれば、「米利上げペースが加速する」との観測が一段と強まり、1300ドルの節目を割り込む可能性がある。ただ、2月のように平均時給の大幅な伸び率が米株価急落を招くようだと、投資家がリスク回避に動き、資金の逃避先として安全資産とされる金への関心が高まれば、投資資金の流入により反発することが予想される。
 一方、非農業部門就業者数と失業率が市場予想を上回った場合でも、平均時給が市場予想を下回るようだと、「米利上げペースが加速する」との観測が後退し、NY金は買いが先行する可能性がある。さらに米輸入制限措置発動による「貿易戦争」への懸念が再燃する材料が出れば、1350ドルの節目を目指す動きになるだろう。

 (注)上記の展望は3月9日夕方時点に作成されたものです。
●アナリスト紹介、第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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