村上 孝一/アナリストの目

重要イベントを控えるNY金、ECB定例理事会にも注目
2018/06/08 17:01:23

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、米利上げ観測が圧迫材料になる一方、為替のユーロ高・ドル安などが支援材料となり、中心限月の期近8月限は1300ドルを挟んでの取引となっている。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は6月12〜13日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催する。1日に発表された雇用統計など堅調な米経済統計発表が相次いでいることから、市場では政策金利が3月に続き0.25%引き上げられることがほぼ確実視され、世界的な金融危機リーマン・ショック直後だった2008年10月以来、約9年8カ月ぶりに2%に到達する見通し。さらに、FOMC後に公表される参加者の政策金利見通しで今年の利上げ想定回数が3月の3回から4回に引き上げられるとの見方も広がっており、金相場の圧迫材料となっている。金利の付かない資産である金にとって金利上昇は金の魅力を相対的に減退させる。

 米FOMCの結果が最大の焦点だが、14日開催される欧州中央銀行(ECB)定例理事会も注目材料となっている。
 外国為替市場ではユーロ圏経済統計の低調な内容やイタリア政局の混乱などを背景にユーロ安・ドル高が進行、5月29日には1ユーロ=1.1509ドルと、2017年7月18日(1.1470ドル)以来10カ月ぶりのユーロ安・ドル高水準を付けた。しかし、その後はイタリアで、大衆迎合主義(ポピュリズム)政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」による連立政権が発足し、約3カ月にわたる政治空白が解消されたほか、再選挙が回避される運びとなり安心感が広がった。さらに、ECBによる早期の量的緩和終了観測が強まったことから反発、7日には1.1840ドルと約3週間ぶりのユーロ高・ドル安水準を付けた。ドル建てで取引される金はドル安になると他通貨の保有者にとって割安になり、需要を喚起する。
 市場では弱い内容の経済統計を背景としたユーロ域内の景気減速懸念やイタリア政局混迷による不透明感を踏まえ、ECBは14日開催の理事会では慎重な構えを維持するとの見方が大勢であった。しかし、プラートECB専任理事が「14日の定例理事会で量的緩和の段階的な規模縮小を進める可能性について議論する」との考えを表明。このほかECBの債券買い入れ策については、ワイトマン独連銀総裁が「年末までに終了されるとの予想は現実的である」と指摘、クノット・オランダ中銀総裁も「量的緩和策を継続する理由はない」との見解を示した。こうした発言により、早期の量的緩和終了観測が浮上している。

 8日〜9日開催される先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)も注目材料。前週末開催されたG7財務相・中央銀行総裁会議では、自国第一主義に突き進む米国と他の6カ国が通商問題で激しく衝突。サミット初日の経済討議も紛糾するようだと、貿易摩擦問題が深刻化する可能性もある。また、他には12日に米朝首脳会談、14〜15日に日銀政策委員会・金融政策決定会合の開催が予定されている。

 NY金は米FOMCで追加利上げが決定され、政策金利見通しで年内の想定利上げ回数が4回となれば、買い方の手じまいなどの売りが活発となり、期近8月限は5月21日に付けた中心限月ベースでの年初来安値1281.20ドルを割り込む可能性がある。ただ、FOMC結果で利上げに関する弱材料出尽くしとなれば、売り方の買い戻しや安値拾いの買いに下支えられ、1250ドルの節目を試すような急落場面を迎える可能性は低いとみている。
 一方、米FOMC結果で弱材料が出尽くし、ECBで早期の量的緩和縮小が示唆されるようだと、NY市場ではドル安・NY金相場高の動きになることが予想され、テクニカル上の長期的な強弱の節目となる200日移動平均線が通る1308ドル付近(6月7日現在)を終値での突破に成功すれば、100日移動平均線が通る1325ドル付近(同)を目指す展開になることが予想される。また、ECB結果がユーロ高・ドル安材料とならなかった場合でも、トランプ米政権の通商政策をめぐるリスクが高まれば、金相場を押し上げる材料になるだろう。

 (注)上記の展望は6月8日夕方時点に作成されたものです。
●アナリスト紹介、第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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