村上 孝一/アナリストの目

NY金、下値を試す場面も
2018/08/10 16:54:36

 ニューヨーク商品取引所の金相場は、中心限月の期近12月限は1220ドル台後半で頭を抑えられているものの、中心限月の継続足で7月19日に付けた年初来安値1210.70ドルに近付くと買われ同水準を維持する動きが続いている。

 米通商代表部(USTR)は8月7日、年約160億ドル(約1兆8千億円)相当の中国製品に課す25%の制裁関税について23日に発動すると発表。知的財産権侵害が理由で、7月に340億ドル相当に課した追加関税に続く第2弾となる。一方、中国は8日に対抗措置として、年約160億ドル(約1兆8千億円)相当の米国製品に課す25%の制裁関税を23日に発動すると発表。また、トランプ米政権は第3弾として2000億ドル相当の中国製品に25%の関税を課す方針を示したことに対し、中国も同日に600億ドル相当の米国製品に対して報復関税を課すと表明。
 世界の二大経済大国である米国と中国の貿易摩擦は、投資家がリスク回避に動く要因で、伝統的に金は資金逃避先の資産とされている。しかし、現状は資金の逃避先として金よりもドルが選択される傾向にあり、金はリスクの高まりによる恩恵を受けられずにいる。また、貿易摩擦による中国経済の減速懸念や人民元安により、世界最大の金消費国である中国の金需要が減退するとの思惑が広がっている。

 米労働省が8月3日発表した7月の雇用統計によると、景気動向を反映する非農業部門就業者数は前月比15万7000人増加と、市場予想の19万人増加を下回った。ただ、5月と6月の就業者数は合わせて5万9000人分上方修正されたうえ、労働人口の伸びに対応するために必要される月12万人増を上回っている。さらに失業率が3.9%と2カ月ぶりに4%を下回るなど、全体的には労働市場の堅調さを示す内容だったため、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定している年内あと2回の利上げ実施を支援する内容とみられている。
 米シカゴ連邦準備銀行のエバンズ総裁は9日、一部の米メディアの取材に応じ、米経済が「極めて好調」と語り、年内の利上げ回数は「あと1回か2回」と予想した。エバンズ総裁はFRB高官の中では、インフレの弱さを警戒して利上げに慎重な態度を貫いてきた「ハト派」。だが、減税や歳出拡大による景気浮揚効果を踏まえ「インフレ率が(目標の2%近辺に)とどまるとみられる十分な理由がある」と語り、緩やかな利上げを支持する立場を明確にした。
 外国為替市場では、米中貿易摩擦による逃避資金の流入、好調な米経済や利上げ継続観測などにより、ドル高基調が継続。主要6通貨で構成されるドル指数は8月9日に一時、95.621と、7月19日に付けた年初来高値95.652に迫った。
 ただ、7月の米雇用統計では、物価上昇の先行指標として注目される平均時給が前月比0.3%増、前年同月比2.7%増とともに市場予想と同水準。9日発表された7月の米卸売物価指数が全体・コアとも市場予想を下回り、インフレの落ち着きが示された。10日発表される7月の米消費者物価指数も同様の結果となれば、「米利上げのペースが加速することはない」との見方から、為替のドル高を抑える可能性がある。
 また、NY金は中国・人民元が持ち直すと上昇する傾向にあり、中国政府や中国人民銀行(中央銀行)が景気支援や人民元安定化に動くとの期待が高まるようだと、金相場を支える材料になるだろう。

 NY金は為替のドル高基調が継続すれば、7月19日の年初来安値を割り込み、心理的な節目とされる1200ドルを試す動きになる可能性がある。ただ、前述の米インフレ落ち着きや人民元安の持ち直しが金相場を支える材料として浮上すれば、底固い動きになることが予想される。

 (注)上記の展望は8月10日夕方時点に作成されたものです。
●アナリスト紹介、第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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