盛川 貴洋/アナリストの目

原油は国際情勢を睨みながら一進一退の動きに
2019/02/06 15:44:50

 ニューヨーク原油は50〜55ドルのレンジ内で推移。米中貿易協議に対する楽観論や石油輸出国機構(OPEC)加盟の南米産油国ベネズエラからの供給懸念が相場を押し上げる一方、米国内の原油在庫拡大を警戒した売りが相場の上値を押さえている。

 米中貿易協議を巡っては、トランプ大統領は1月31日、中国の提案を受け、習近平国家主席と会談して貿易問題の最終決着を図る意向を示し、米ダウ・ジョーンズ通信は5日、ムニューシン米財務長官とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が来週初めに北京を訪問し、閣僚級の貿易協議を再開すると報じた。閣僚級協議は1月末以来。3月1日の期限までの合意を目指し、中国による知的財産権の侵害問題などの難題で妥協点を見いだせるかが焦点となる。貿易摩擦などの影響で中国の昨年の経済成長率は28年ぶりの低水準となり、同国のエネルギー消費量の減少懸念は相場の圧迫材料。来週からの米中の閣僚級協議が進展を見せれば、原油相場の支援材料となる。

 ベネズエラを巡る政治的な混乱が続く中、カナダの首都オタワで4日、ベネズエラの反マドゥロ大統領派の米州諸国を中心に構成する「リマ・グループ」(14カ国)の閣僚会合が開かれた。政情不安が続く南米ベネズエラの反体制派のグアイド国会議長を「暫定大統領」として承認すると発表。米国などに追随し、ベネズエラのマドゥロ大統領に対する国際的な圧力を強めた。また、ベネズエラ軍に対して暫定大統領への「忠誠」を示すよう要求。一方、「武力行使ではなく政治・外交を通じた平和的な移行プロセスを支持する」と表明した。
 これに対し、ベネズエラ政府は、承認した国々との国交断絶を示唆。マドゥロ氏は4日、法王に書簡を送り、フランシスコ・ローマ法王は5日、双方が望めば平和的解決に向けて仲介に乗り出す考えを示している。

 トランプ米政権はベネズエラ国営石油会社(PDVSA)に対し、広範囲に及ぶ制裁措置を発動。米国への原油輸出を大幅に減らすことを目指し、マドゥロ大統領に退陣するよう圧力をかけているが、世界的な原油の需給バランスに与える影響については見解が分かれる。
 クウェート国営石油会社(KPC)のハシム最高経営責任者(CEO)は5日、ベネズエラ産原油の輸出が大幅減少することで、世界的な原油供給が2019年に打撃を受ける可能性があるとの見方を示した。一方、ロシア石油最大手ロスネフチのリロン第一副社長は5日、ベネズエラは債務を減らしてきており、政治的な混乱は一時的なものにすぎないとの見方を示した。今年の同社の生産量全体に関しては増加すると予想した。PDVSAは、ロスネフチに対する債務を原油供給で返済している。ロスネフチのベネズエラ事業は、同国での政治対立の中で注目を集めている。なお、ロシアはマドゥロ政権支持を表明しており、米国とロシアの対立がベネズエラを巡る情勢を複雑化させている。

 このような情勢の中、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が5日報じたところによると、OPECの盟主サウジアラビアと、サウジに近い湾岸諸国は、ロシアを中心とするOPEC非加盟産油国10カ国と、国際石油市場の管理に向けた正式な協定を締結することを支持している。OPEC筋が明らかにした。これまで協調減産に取り組んできたOPECと非加盟産油国の連合だが、協定により新たな石油カルテルへ移行することになる。
 トランプ米大統領は原油価格を低く保つよう圧力をかけ、米シェールオイル生産も増加していることで、OPECの石油市場への影響力が低下。一部のOPEC当局者は、新たな協定が原油価格を下支えすると期待する。一方でイランや他の産油国は、サウジとロシアの2大石油輸出国の支配が強まることを警戒し、OPECと非加盟産油国の一層緊密な提携に反対しているという。
 OPECとロシアなど非加盟産油国は2月18日ウィーンで行われる会合で、新協定に関する提案について協議する。各国石油相は4月のOPEC総会で最終合意に達することを望んでいるとされる。

 来週のニューヨーク原油は、ベネズエラ情勢や、米中貿易協議、OPEC内での新たな動きなど、世界情勢を巡る不透明感が強いことで方向感を見出し難く、一進一退の値動きが続くと予想される。ただ、米中西部を襲った寒波は製油所の稼働に支障を来しつつある。寒波が北東部に広がる可能性があり、暖房油需要が増える中、供給が滞り、製品価格の上昇が原油価格に影響を与えかねないとの指摘も聞かれる。このため地合いは底堅く、短期的に下落した場面では買い拾われる底堅い値動きが見込まれる。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)フューチャーズ24、盛川 貴洋
 現在、フューチャーズ24にて、FAX・メール情報の市況作成等を担当。商品市場だけでなく、マクロ経済から金融市場まで守備範囲が広く、本質をついた鋭い分析が持ち味。