長田 泰/アナリストの目

シカゴトウモロコシ、95年相場の再現はある!?
2019/05/24 19:24:28

 今週のシカゴ穀物相場は、先週に引き続き産地の降雨が作付け作業に支障を来していることが支援材料となり続伸となったが、今週の上昇で期近限月は一時399セントと400セント目前に迫り、この2週間で50セント超の急騰を見せたことで高値警戒感も出ていたところに、米農務省から農家に対する160億ドル規模の支援策が正式に発表されたことから、週末にかけてはやや調整ムードが広がった。ただ、依然としてコーンベルトでは雨がちな天候が続いており、今週のクロッププログレスで公表された19日現在の作付け進捗は49%と1980年以降で最も遅い作付ペースである。

 80年以降、今年に次いで作付ペースが遅かったのは95年。当時のシカゴトウモロコシ期近のチャート、及び市場環境等の今年との比較を表に示したが、95年5月、当時250セント前後で推移していたトウモロコシはその後天候相場期、需給相場期と上昇相場を継続、結局翌年7月に史上最高値(当時)の554.5セントで天井を付けるまで、94年12月を大底とした上昇相場は1年7か月継続した。

 さて、95年当時と今年とを見比べると、極端な作付遅延のほかに前年度が豊作であったこと、5月の需給報告での生産高見通しは作付意向面積、傾向単収を用いたという点は共通している。一方、豊作翌年の作付ローテーションでトウモロコシの作付意向面積が縮小した95年に対し、今年は米中貿易戦争の影響で大豆の作付面積を減らすあおりを受け、トウモロコシの作付面積は増加する意向面積となっている。トウモロコシ単体で見ると今年は前年度豊作で繰越在庫は潤沢にも関わらず、作付けを増やすという弱気観測が強まりやすい環境にあった。こうしたことは大口投機筋(ファンド)のポジションにも表れていて、95年に限らず平年の傾向として天候相場初期段階には買い越しポジションを持ち、所謂天候プレミアムという上昇リスクに備えたポジションを構築する傾向にあるが、今年は早くから売り越しポジションとなり、天候相場序盤から買い越しに転じるどころか歴史的な高水準の30万枚超にまで売り越しポジションは膨らんだ。これがここ2週間の急騰の一因でもあると思われるが、先週のCFTCの発表時点では売り玉の整理が進んでいるとは言えず、依然高水準(28万枚)の売り越し。農業技術の発達や種子の改良により、これまで作付遅延に対しては楽観的な観測が根強かったが、5月も後半になってもなお土壌水分過剰な地域が多く残り、作付面積の下方修正がほぼ確実視されつつある現状、ファンドポジションは今後も相場を支えやすい、また上昇を加速させる要因になりそうだ。

 民間機関からも今年の作付面積が意向面積を下回る、また単収も低下するとの見通しが相次いでいる。代表的なものとして米農業専門誌ファーム・フューチャーズは21日、今年度の米国産トウモロコシの作付面積が9000万エーカーと、農務省が5月の需給報告で予測した9280万エーカーを下回るとの見方を示した。また、産地では6月まで雨が続く見通しと指摘した上で、単収は夏場の天候を平年並みと想定しても169.5ブッシェル/エーカー(BPA)と農務省予測176.0ブッシェルから低下すると予想している。これにより生産高は137億6000万ブッシェルと、農務省予測を約13億ブッシェル下回る見込みとしており、5月の需給報告で農務省は期末在庫を前年度比3億9000万ブッシェル増の24億8500万ブッシェルと見込んでいたが、単純計算では逆に期末在庫は前年度から半減するという計算になる。

 95年当時は6月の需給報告で作付面積、単収とも下方修正され、生産高は7億ブッシェル、8%下方修正された。仮に今年も生産高8%減と想定すると約12億ブッシェルの下方修正となる。そのまま期末在庫減とすれば在庫率は5月の14.4%から8%台に低下することになる。95年当時、世界のトウモロコシ市場の輸出市場における米国のシェアは7割を超えていたが、今日では南米や東欧の台頭により現在の米国のシェアは3割台に低下している。米国の存在感低下は米国の不作=相場上昇とは言い切れない環境であるともいえるものの、6年連続の豊作、米中貿易戦争により売り安心感が蔓延していたトウモロコシ市場に約四半世紀ぶりの不作のリスクが高まっていることは確かであり、安値覚えで戻りの売りを狙うよりも素直に買い方針で向かうべきとみる。

(注)上記の展望は5月24日の夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)法人部、長田 泰
 現在、法人部にて国際穀物を中心に商社顧客の取引を担当。2017年TOCOM農産物アナリスト育成セミナー修了者。時事通信、日経新聞の国際穀物市況等にコメントを提供中。ソイオイル・マイスター。

金地金
金地金3つのメリット本日の金価格 金地金 購入・売却の手順
商品先物取引
初めての商品先物取引商品先物取引の始め方商品先物取引の税金
マーケット情報
海外商品相場国内商品相場ニュース・市況チャートアナリストの目
無料情報ツール
チャート分析ソフトDi-2モバイルサービスEメールサービス金価格メールFAXサービス
商品セミナー
開催スケジュール