村上 孝一/アナリストの目

NY金、早期の米利下げ期待で強地合いか
2019/06/21 16:45:38

 米連邦準備制度理事会(FRB)が6月18〜19日開催した連邦公開市場委員会(FOMC)声明で、経済情勢を「忍耐強く」見極めるとしてきた1月以降の文言を削除。米中「貿易戦争」をめぐる先行き不透明感の高まりやインフレの低迷を指摘した上で、「景気拡大を持続させるために適切に行動するだろう」と言及、年内に利下げに動く可能性を示唆した。また、同時に公表されたFOMC参加者の政策金利見通しでは、参加者17人のうち、前回3月時点でゼロ人だった「年内利下げ」がほぼ半数の計8人に上り、このうち7人は0.25%の引き下げ2回分を見込んだ。
 20日のニューヨーク金融・債券市場では、米FRBによる早期利下げ観測を背景に債券が買われ、海外市場の取引時間帯では長期金利の指標である10年物米国債利回りが約2年7カ月ぶりに一時2%の大台を割り込んだ。CMEグループのフェドウォッチによると、20日現在で米FRBが7月に0.25%利下げすると金利先物が織り込む予想確率は100%。年末までに0.75%利下げがあるとの予想確率は67%となっている。
 また、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が18日の講演で、インフレ目標の達成が危ぶまれる状況となれば「追加金融緩和が必要」と述べ、利下げなどの緩和策も辞さない姿勢を示したのに続き、米FRBが年内に利下げに動く可能性を示すなど、主要国中央銀行の金融緩和姿勢が高まっている。

 ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金相場は、前述の要因が金利の付かない資産である金には支援材料となった。また、ドルが米国の早期利下げ観測を背景に対ユーロで下落し、ドル建てで取引される金に割安感が生じたことで買われたほか、中東情勢の地政学リスクも買い材料となり急騰。中心限月の期近8月限は21日のアジア時間帯の取引では一時、1415.40ドルと1400ドルの節目を突破し、継続後で2013年9月3日(1416.40ドル)以来約5年9カ月ぶりの高値を付けた。
 主要6通貨で構成されるドル指数は米国の早期利下げを背景に下落しており、200日移動平均線に到達している。昨年5月に突破して以降、今年1月、3月、6月と同平均線割れを試したが割り込むことはなかった。来週発表される米経済統計やパウエル米FRB議長の講演結果で、7月利下げ観測が一段と強まり、ドル指数が同平均線を割り込むようだと、ドル安が進行し金相場に投資資金が流入する可能性がある。
 また、トランプ米大統領は20日、イラン革命防衛隊による米国の無人偵察機の撃墜に関し、具体的な対抗措置について「いずれ分かる」とだけ述べた。さらに、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が20日、米国の無人偵察機がイランに撃墜されたことへの報復として、トランプ大統領が同日、イランに対する攻撃をいったん承認した後に攻撃を撤回したと報じるなど、中東情勢をめぐる地政学リスクの高まりが意識され、安全資産とされる金には支援材料となった。

 NY金は20日の急騰で相対力指数が80を突破するなど、テクニカル的には買われ過ぎ感が高まっており、買い方の利益確定売りや新規売りに圧迫される可能性はあるが、米国の早期利下げ観測が支えとなりテクニカル要因で下落した場面では買い拾われ、強地合いを継続するとみている。また、前述のように為替のドル安が進行し、中東情勢や米中貿易摩擦が投資家のリスクオフの動きを強める材料となれば、期近8月限は中心限月の継続足で2013年5月中旬以来となる1450ドル突破を試しに行く展開が予想される。

 (注)上記の展望は6月21日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介 第一商品(株)フューチャーズ24、村上 孝一
 現在、フューチャーズ24にて、ファンダメンタルズ分析と市況作成を担当。時事通信社、日本経済新聞社に貴金属・石油市況等のコメントを提供中。

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