長田 泰/アナリストの目

商品相場、金急騰の背景に『異榻同夢』の現実化
2019/06/28 23:23:45

 6月28日、29日の予定で大阪でG20サミットが開催されている。2008年のリーマンショック後、新興国が経済力を拡大していることもあり、G20財務大臣・中央銀行総裁会議に各国首脳も参加するという形でスタートした。それまではG7サミットまたはG8(G7+ロシア)サミットが先進国首脳会談として存在感が大きかったが、今日ではG20がそれに代わっている。ただ、今や世界の絶対的なリーダー不在『Gゼロの時代』(ユーラシア・グループ)、多極化の時代に入っていると言え、新しい世界秩序を模索することになる。
 今月、金相場が2013年9月以来の1400ドル台回復の急騰を見せた。18日、19日に開催された米FOMCでの年内利下げ示唆が切っ掛けとされているが、今月はFOMC以外にも下記の通り金急騰に繋がるような様々なニュースがあった。

@6月5日  中露首脳会談(モスクワ) ユーラシア広域の共同覇権運営構想
A6月13日 オマーン湾ホルムズ海峡にて日本系タンカー含む2隻が襲撃にあう
B6月18日 トランプ氏再選出馬表明
C6月18日 フェイスブック中心の28企業機関グループ暗号通貨LIBRA発行表明
D6月18日、19日 FOMC開催、年内利下げ示唆
E6月20日 米無人偵察機イラン軍に撃墜される。トランプ報復攻撃指示するも直前で中止
F6月25日 ホワイトハウス ブラートセントラル連銀理事に次期FRB議長打診の報道
G6月26日 トランプ大統領、米メディアのインタビューで日米安保条約への不満漏らす
H6月28日、29日 G20サミット(大阪)
@ロシアと中国は、ユーラシア広域の共同派遣運営構想のやり方を決めた。冷戦後の米国単独覇権体制を崩し多極型派遣への転換を図るもの。中国が米国に輸出して得たドルで米国債を買い支えるという共栄策は、トランプ政権に替わってからの米中貿易戦争で破壊された。
AEトランプ大統領はすぐにイランによる襲撃として不発弾を撤去する動画を証拠として公開したが、イランが行ったという明確な証拠にはなっておらず、実行犯はいまだに不明。一方、20日の米国無人偵察機撃墜については、米国は意図的にトランスポンダ(無線送受信機)を切ってイラン領空に侵入、イランは正当防衛で撃墜したが、米国は報復としてミサイル基地空爆の準備をしたが、予定10分前に中止。今回の米国の対イラン敵視の行動に対して日本や欧州は慎重な姿勢を崩していない。
BFトランプ大統領はこれまでのパウエルFRB議長の政策(利上げ)に対して再三批判しており、自身の大統領再選出馬表明と合わせ、現在のFOMCメンバーの中で最もハト派のブラート氏を指名打診することで、二期目もドル安指向の政策運営を進めることを示唆。
CLIBRAは主要通貨・国債のバスケットを担保とした暗号資産。ビットコインのような希少性による価値を求める暗号資産と違い、法定通貨により近い安定性と決済性を備えると期待される。これが成功するとドルの覇権が低下に繋がるがこれを米国の大企業が発表した。

 現在の米中貿易戦争の対立、米国が敵視しているイランやベネズエラを支援するロシアとトランプ政権は対立しているが、ドルの基軸性や米国一極体制の限界、不満に関しては結局のところ共有しているのではないか、時には連携しているのではないかとさえ思える。立場は違う(対立はしている)が同じ方向に向かっているということで『異榻同夢(いとうどうむ)』が現実化し始めたのがこの6月の動きだろう。
 米国単独覇権が多極覇権に向かう過程では、通貨の面では無国籍通貨の金が買われる。上記のLIBRAのような暗号資産も代替投資先として選択される可能性があるが、主要通貨の一部が急落した場合、LIBRAの価値も毀損する可能性があることは弱みだろう。その点、金は文字通り『無国籍通貨』としての本領を発揮する。
 ここ数年ロシア、中国ほか新興国中心に中央銀行が金準備を増加させている背景には多極覇権となる時代に、自国通貨がより強い安定した通貨であるための準備を進めているとも考えられる。現在日銀は約765トン(世界9位)の金準備を保有しているが、これは長年変更されていない。10位以下に転落するのもそう遠い将来ではないだろう。
 日本の金準備の外貨準備全体に対する比率は2.4%に過ぎず、これはG7の中では7.8%の英国に次いで6位。7位は金準備ゼロのカナダ。日本は米国の従属国と呼ばれることがあるが、外貨準備の大半は米国債に偏重している。仮に来年の米国大統領選挙でトランプ氏が再選を果たし、二期目ということで一期目以上にドル安政策、覇権放棄の政策を積極的に進める可能性が大きい。そのドル安はイコール円高とはならない可能性がある。その上日米安保条約見直しなどの動きがあればドル以上に円が売られる可能性も?
 今月約6年ぶりに1400ドル台を回復したNY金相場だが、テクニカル面から見ると向う3か月程度で1500ドル乗せ、2年以内には1700ドルを付けてもおかしくないだろう。

○シカゴトウモロコシ、改めて買い場提供か?
 28日の農務省報告が注目を集めているが、発表後一時的に下押す場面があったとしても、今年の米国は作付が約1カ月遅れている分、重要な受粉期が8月の猛暑時期に掛かるリスクがある上、早霜の時期により成熟期を十分とれず単収が下がるリスクも高くなっている。そのため現在買いスタンスに転換しているファンド勢のポジションも米国の生育シーズン終盤まで継続するだろう。南米の豊作による供給を意識する声はあるが、6月の需給報告でのアルゼンチン、ブラジルの期末在庫は両国合計でも1300万トンに満たず、米国の輸出見通し5461万トンが今後大きく下方修正された場合、カバーしきれるものでもない。
 今週国際穀物理事会(IGC)が月例の世界穀物生産、消費予想を発表した。これによるとトウモロコシの世界生産高見通しは10億9500万トンと前回から2300万トン下方修正されている。これをすべて米国産の減少分と仮定し、米国トウモロコシ単収を前回の需給報告の166BPUとすると、作付面積は約600万エーカー下方修正される。
 作付け面積と同時に発表される四半期在庫報告を材料に売られる場面があれば、良い買い場提供となるのでは。

 (注)上記の展望は6月28日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)法人部、長田 泰
 現在、法人部にて国際穀物を中心に商社顧客の取引を担当。2017年TOCOM農産物アナリスト育成セミナー修了者。時事通信、日本経済新聞の国際穀物市況等にコメントを提供中。ソイオイル・マイスター。

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