長田 泰/アナリストの目

シカゴトウモロコシ、360〜380セントのレンジ
2019/08/30 20:11:13

 来週のシカゴ・トウモロコシ相場は、上にも下にも行きづらい状況となりそうだ。中心限月12月きりは今週一時、今年5月の安値363.75セントに迫るも切り返した。心理的節目の360セントも意識されるとみるが、380セントを上回る材料もなく、レンジでのもみ合いと予想する。

 例年だと産地のクロップツアーも終え供給サイドの見通しが固まる時期であるが、今年は生育ペースが2〜3週間遅く、9月の米農務省需給報告では生産高の判断が固まるところまではいきそうにない。特に今のところ天気予報ではそれほど懸念されていないが生育が遅れている分、早霜への警戒は最後まで残るだろう。従って収穫作業が進展するまでは下値はサポートされるだろう。但し、一方で上値を追う材料にも乏しい。6月末の作付面積報告以降、農務省報告は買い方を失望させる数字が続いている。作付け遅延を材料に6月までに急速に売り越しから買い越しに転じたファンド勢は今は買い玉整理を優先させている。また6月までの相場急騰で現物需要が退いてしまい、需要分野は軒並み農務省の見込みを下回り低迷している。

 米中貿易紛争の先行き不透明感が払拭されない中、先のG7サミットに合わせて行われた日米首脳会談で日本が飼料用米国産トウモロコシを数億ドル規模(250万トン〜275万トン)購入することで合意した。また、トランプ大統領がエタノール産業への支援政策について言及したことなどもシカゴ市場にとっては支援材料であるが、上記の通り、供給サイドがはっきりしないうちは上値を大きく目指す材料とはならないだろう。

 日本の米国産トウモロコシ追加購入に関しては不透明なところが多い。日本は年間1550万トンのトウモロコシを輸入しているが、そのうち1100万トンが飼料用トウモロコシである。輸入もとは90%以上が米国産である。2012年に米国産が不作となり、南米ブラジル、アルゼンチンや黒海沿岸国のウクライナなど供給元を多産地に拡げ、米国産シェアは70%台に低下したが、米中貿易戦争で中国が米国産以外の国へ大豆や穀物の購入に走ったことで米国産の価格が低下、日本の購入は再び米国に集中することになり米国産シェアは再び90%を超えている。
 そこに今回の追加購入の話であるが、既に90%以上を米国産が占めていることで他の産地の購入を控えるまたはキャンセルして米国産を購入するという図式は成り立たない。報道によれば備蓄としての保管料を国が補助するという話も出ているが、現在、民間のランニングストックとして85万トン(約1カ月分)の主原料(トウモロコシ、飼料米等)が備蓄されている。これに加え250万トン〜275万トンのトウモロコシが備蓄として加わると、国内には約4か月分の在庫が残ることになる。

 安倍首相は今回の購入の理由として、国内で初めてツマジロクサヨトウという害虫が見つかり、これが国内飼料用トウモロコシ生産に被害を与える可能性があるためと説明した。しかし、国内で生産される飼料用トウモロコシは青刈トウモロコシと呼ばれる子実だけでなく茎や葉もすべて刈り取り、牧草などと同様に繊維質が豊富な『粗飼料』向けに作られるものがメインで国内では年間450万トン程度生産されている。
 しかし、今回米国から輸入される子実トウモロコシは大豆ミールなどと混ぜ合わされ、炭水化物、タンパク質が豊富な『濃厚飼料』向けのものであるため、飼料用トウモロコシといっても簡単に代替が出来るものではない。また害虫被害についても現在12の県でこの害虫が発見されているが、被害規模はまだわからず、また、農水省のデータによればこれら12県の平成30年産の青刈トウモロコシの合計生産高は108万トンに留まる。安倍首相の説明は、米国からのトウモロコシ輸入ありきの上で、理由を後付けしたに過ぎないと言ったら言い過ぎだろうか?

 日本の追加購入は単純に考えると需要の増えるシカゴ市場には支援材料、供給の増える日本市場には弱気材料と言えるのだが、現時点ではその運用について不透明な部分が多く、東京市場もあまり織り込めていない様子だ。

○ツマジロクサヨトウの発生確認日と平成30年青刈トウモロコシ収穫量

 県名  日付  収穫量(トン)
鹿児島 7月3日  82,200
熊 本  12日  153,100
宮 崎  12日  231,400
長 崎  12日  23,700
沖 縄  12日       36
大 分  12日    31,400
佐 賀 8月5日    294
岡 山  19日     ---
高 知  20日    ---
茨 城  20日  123,000
福 岡  22日    ---
千 葉  28日  51,800
 (注)上記の展望は8月30日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)法人部、長田 泰
 現在、法人部にて国際穀物を中心に商社顧客の取引を担当。「商品アナリスト(貴金属)・東京商品取引所認定」、「商品アナリスト(穀物)・東京商品取引所認定」を取得。2017年TOCOM農産物アナリスト育成セミナー修了者。時事通信、日本経済新聞の国際穀物市況等にコメントを提供中。ソイオイル・マイスター。

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