長田 泰/アナリストの目

貴金属、金の天井はまだ先
2019/09/06 21:23:42

 米国の金融政策が利下げに転換し、トランプ米大統領の自国第一主義が国際的な協調を崩し、通貨安競争や現在米国と敵対している国の中央銀行を中心に、金準備を積み増す流れが出来ている。それは「米ドル離れ」とも表現され、基軸通貨としての米ドルに対する信頼が揺らいでいる。とはいえ、すぐにドルに代わる通貨は見当たらず、消去法的に金に資金がシフトしている。最近の暗号資産を民間、公的機関ともに研究開発を進めているというのも、ドルに替わる決済通貨を探るという点では同じ流れだ。

 こうした流れから現在の金の上昇相場は公的機関の金購入、民間では金ETFへの資金流入と金の通貨という側面が全面に出て上昇してきた。そして今年6月、過去5年来の強固な上値の抵抗線だった1380ドルを上抜けると上昇の流れは一気に加速し先月には1560ドル台にまで急騰した。一方、同じ貴金属でありながら産業用途の色合いの強い銀やプラチナは、陰りの見える世界経済への警戒から低迷する銅の動きと連動してきたが、ここにきて大きく値を戻してきている。金との割安感に着目したバリュー買いが入り始めたようだ。
 2018年1月始値を100とした各メタルの値動きをグラフにしたが、この7月から銀が、8月からプラチナが金の高騰の動きにキャッチアップしようと動き出している。一方、金はこれまでの上昇で投機筋のポジションはCFTC報告によるとネットで28万枚の買い越し、買い残玉は30万枚を超えてきた。これは過去最高水準の2016年7月以来の高水準であり、ここからの投機筋の買い余力は乏しいのではないかと警戒する声が出ていた。
 5日のNY市場では米中貿易交渉が10月初旬に再開する見込みとなったこと、ISM非製造業景況指数が予想外に良かったこと、英議会でジョンソン首相の提案が軒並み否決されイギリスのEU離脱が遠のいたことなどがリスクオンムードを誘い、株式市場が上昇する一方、金は久しぶりに30ドル以上の下落を見せた。

 ただ、これをもって金相場の天井打ちと判断するのは早計であろう。まず冒頭に挙げた現在の金高の理由がなに一つ解決されていない上、テクニカル面から見ると、1400ドル乗せ後わずか2か月足らずで150ドル以上急騰した相場が多少下押すことは『健全な調整』としてむしろ買い方にとっても好感される『押し』である。またチャート上からも約6年にわたって300ドル幅のレンジでもみ合いを続けエネルギーを蓄積した後にようやく上抜けた相場が、レンジ幅の半分を多少超えた上昇幅で天井打ちするとは考えにくい。
 昨年8月の安値(1167.1ドル)を起点に今年2月の高値(1349.8ドル)までの上昇幅182.7ドルに対し、5月の安値(1267.3ドル)から直近の高値(1566.20ドル)までの上昇幅298.9ドルは1.6倍強となり、エリオット波動で言うところの上昇第2波(最も上げ幅が大きくなりやすい)の節目の水準に達したとも言え、調整入りしてももおかしくない。しかし、目先の下げはあくまでも『調整』と捉えるべきで『銀買い金売り』、『プラチナ買い金売り』なども活発になりそうだが、貴金属全体の値位置は堅調を維持し、金の下げもせいぜい一時的に1500ドルを割るかどうかの浅いものになると見る。
 基軸通貨としての米ドルの転換の可能性というファンダメンタルズの大きなテーマは、数か月や1年で解決されるものではないだろう。テクニカル面から見ても金(貴金属)相場は長期上昇トレンドの緒についたばかり。早ければ半年以内、遅くとも2年以内にドル建て金価格の史上最高値(1923.7ドル)更新、数百ドル単位の大きな下落はその後2000ドル付近に達してからと見る。それでもその下げは『調整』に過ぎないだろう。

 (注)上記の展望は9月6日夕方時点に作成されたものです。

●アナリスト紹介
 第一商品(株)法人部、長田 泰
 現在、法人部にて国際穀物を中心に商社顧客の取引を担当。「商品アナリスト(貴金属)・東京商品取引所認定」、「商品アナリスト(穀物)・東京商品取引所認定」を取得。2017年TOCOM農産物アナリスト育成セミナー修了者。時事通信、日本経済新聞の国際穀物市況等にコメントを提供中。ソイオイル・マイスター。

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